私は既に5年以上のうつ病歴の患者です。さすがに今では精神的には安定してきましたが、身体的な苦痛が残っており、辛い日もあります。私は、医師でもなければ専門家でも有りませんので、あくまでも私自身の体験と思いを書かせて頂きたいと思いますので、うつ病についての医学的な知識や専門用語を用いる事は出来ません。その旨ご了承くださいませ。私の体験を通じて、一人でも多くの方に共感して頂けたり、勇気や希望を持っていただく事が出来れば嬉しく思います。
うつ病の発症と闘病
では早速、まず私がうつ病を発症したのはいつですか?と問われたら、正直いつとは答える事が出来ません。いつまでが正常な自分で、いつから病気になったのか、勿論病院のカルテによって確認する事は出来ますが、内科や外科など、その状態に気付くなり、予約の日時が決まっての初診という病気では無いのです。うつ病とは、発症してしまった時点で直ぐに判断が付き病院へ行くという事はまず無いと思います。仮に、早い段階で周囲の方々から異変に気付かれたとしても、その時には既に多かれ少なかれ、病状は進行してしまってるのです。
私の場合は、何となくやる気が失せてきて、口数が少なくなり、何よりも可愛い子供の前で笑顔に成れなくなったのです。その時点で、まさか自分がうつ病などとは考えもしませんでした。しかし、そんな様子を見かねて妻が心療内科への受診を勧めたのです。しぶしぶ行ったのですが、診察の結果、紛れもなく「うつ病」だったのです。
病名を告げられると同時に、急激に絶望感に襲われ、気分が沈み込むという実感が湧いてきました。夢であってほしいとさえ思いました。よほど早期の段階で受診し、薬の効き目が出れば、一か月ほどで完治するケースもあると聞きましたが、私には到底信じられませんでした。
私の場合は、初診の時点で既にかなり進行してしまってたのでしょう。正に、地獄の日々の始まりとなりました。大袈裟な表現と思われるかも知れませんが、本当に地獄の日々なのです。一般的に、うつ病は心の病と認識されており、確かに間違いの無いことですが、同時に身体的な苦痛も味わうという事はあまり理解されていないのではないでしょうか。
私の場合は、精神的な苦痛よりも遥かに身体的な苦痛の方が酷かったです。地に足が付いていないようなフワフワ感やふらつき感、言葉に表現し難い倦怠感、頭重、全身の異様なまでの凝り固まり、それに薬の副作用と思われる震えや痺れも伴いました。立っているのも辛い日々も有りましたが、布団の中で寝ている訳にもいかないのです。
なぜかと言えば、うつ病というのは患者本人がどんなに辛くとも、外から目に見えないのです。内科や外科的な大病であれば、手術などの治療を受けての入院も有るでしょうし、骨折などの大けがをすれば、ギブスをするでしょう。そのよな病気を患ってる患者さんには本当に失礼で申し訳ないのですが、羨ましくさえ思えるほどでした。周囲の目からもハッキリと目に見えるのですから。患者さんに対する思いや接し方も全く違うでしょう。
対して、うつ病は、ともすれば家族からの理解さえも十分に得られないのです。いつまで経っても辛そうな顔をして病院通いを続ける訳ですから、サボリ病や仮病扱いをされかねないのです。実際に私は家族から、あまりの辛さにフラフラになり呼吸も荒くやっとの思いで歩いていたら、芝居じゃないの?と信じられない言葉を浴びせられた経験が有りました。こんな酷い扱いは、私だけと信じたいですが、よく似た経験をされている患者さんはきっといらっしゃる事でしょう。私自身、調子が良い日も有れば、悪い日も有りました。このように、体調の良し悪しの波があるという事も、なかなか理解を得られない要因ではないでしょうか。
よく耳にするのですが、うつ病は天候や湿度、気圧の変化に応じて症状が変化する事があるのだそうです。その日によって、体調の波があるというのも納得です。うつ病はどんなに医学的に語られても治るものではないと思います。十分な理解を持って患者さんと一緒に闘って下さる方がいらっしゃるという事が、なによりの特効薬と言っても過言ではないのです。
うつ病に悩むかたへ
何度も力説しますが、うつ病は家族の方はおろか、どんな名医であっても心の中を透視する事は不可能なのです。ですから、患者さんの事を100%理解をしてあげなければならないのです。でなければ、患者さんの心は増々沈み込み、絶望から孤独、その苦しみから抜け出せずに命を絶ってしまうという最悪の結果を招きかねないのです。
統計では、自殺者の数は減少の傾向にあるとの事ですが、精神患者の自殺者の数は増えているという悲しい現実があります。私自身も孤独になり、命を絶つ勇気は無かったのですが、悲しみをぶつける方法が無く、身体を引っ掻きまくり、傷だらけにしてしまった事が有りました。そんな馬鹿な事をしても何の解決にも成らないのですが、ギリギリのところまで追いつめられてしまうのです。自暴自棄という状態ですね。治りたくても治らない、周囲からは呆れられ、挙句の果てには見放されてしまうような感覚で、被害妄想だと酷い言葉を投げかけられる事もあり、もう一人で耐えるしかない状況になりました。
100%の理解を得られなくてもいい、心の内を真剣に聞いてくれるだけでもいい。そんな思いの5年間を経て、私はようやく元の自分を取り戻しつつあるのかなと思っています。心の内を吐き出せるのは、医師と大親友でした。
いちばん温かく見守り理解をしてくれる家族が居てくれないほど悲しく不幸な事はありません。患者さんに対してはこう言いたいです。誰か一人でもいいから、話を真剣に聞いてもらえる人を持ってください。もし無理なら日記に綴るなど、何らかの手段で心の内を吐き出してみて下さい。きっと、少しは気分が安らぎます。それから、ご家族や身近な方々には言わせて下さい。
ご家族の方々も辛い思いでしょうが、本当に辛いのは他の誰でもなく、患者さん自身なのです。必ず話に耳を傾けて下さい。そして、その話を100%信じて下さい。私のように患者さんを苦しめる事の無いようにして下さい。絶対に少しでも早く良くなりますよ。