「何もかもうまくいかないのは自分のせいだ……」
人間、誰しもストレスが溜まることや落ち込むことはありますが、それが慢性的に続いているということはありませんか? もしも抑うつ状態が続いている場合、それは気分変調性障害かもしれません。今回は気分変調性障害の症状・特徴について説明していきます。
気分変調性障害とうつ病は似ているようで違う
慢性的に抑うつ状態が続くと聞いて、「もしかして、うつ病?」と考える人もいるかもしれませんが、気分変調性障害とうつ病は似ているようで違います。
まずは気分変調性障害の具体的な症状を見ていきましょう。
- 抑うつ状態
- 倦怠感(疲労感)
- 睡眠障害
- 絶望感
- 集中力の低下
- 興味関心の低下
- 食欲低下または過食
これらの症状を見て気づいた人もいるかもしれません。そうです、気分変調性障害とうつ病は症状に大きな違いはなく、ほとんど共通しています。そのため気分変調性障害とうつ病を同じ疾患として捉えている人もいるようです。
また、うつ病という病名があまりにも有名なため、本当は気分変調性障害にもかかわらず、うつ病として認識されているということがあるようです。
しかし、本当に気分変調性障害とうつ病が違うものであれば、わざわざ名前を変える必要はないでしょう。気分変調性障害とうつ病には違いがあります。
気分変調性障害とうつ病の違いとは?
① 抑うつ状態がほぼ1日中続く
気分変調性障害とうつ病の違いのひとつは時間です。うつ病は1日中ではなく、時間帯によって症状の重さに差があります。過去にうつ病になったことがある私自身も、うつ病のときの抑うつ状態には朝・昼・晩で違いがありました。
うつ病は朝がもっともつらい時間帯だと言われており、私の場合は目が覚めてから2〜3時間が本当につらく、ベッドから起きあがることができないほどひどかったです。時間が経過するとともに抑うつ状態やその他の症状は軽くなり、夜は朝の状態に比べ、同じ身体とは思えないほど楽な状態でした。
時間帯によって症状に差があるうつ病に対し、気分変調性障害は”ほぼ1日中、抑うつ状態が続く”慢性疾患と呼ばれています。
② 症状の重さが違う
気分変調性障害とうつ病の症状はほとんど共通していますが、それぞれの症状の重さには違いがあり’’気分変調性障害の症状はうつ病よりも軽い’’です。
しかし、症状が軽いからといってうつ病よりも軽い精神疾患だとは言い切れません。1日中、軽い抑うつ状態が数年間続くというのは家庭や仕事、プライベートで様々な支障をきたします。
また気分変調性障害は症状が軽いことから自分自身の性格のせいなどにして片付ける人が多く、なかなか病院まで足を運ばないことが多いようです。
私も病院へ行ったときはうつ病と診断されましたが、病院へ行く3〜4年前から精神的にムラや気分の落ち込みがあることはわかっていました。しかし、仕事を休まなければいけないほどのひどい症状は現れなかったので、そのまま何もせずにいました。
今、思い返してみると、当時の状態は気分変調性障害だったのかもしれません。実際、気分変調性障害の体験談を読むと、身体の不調が始まってから数年後にやっと病院へ行く人がおり、なかには10年以上経過したあとに病院へ行き、気分変調性障害と診断される人もいるほどです。
③ 気分変調性障害は心因性、うつ病は内因性
症状が似ている気分変調性障害とうつ病ですが、発症する原因はそれぞれ違うと言われています。うつ病は内因性によるものが多いと言われていることに対し、気分変調性障害は’’心因性によるものが原因’’である場合が多いようです。
内因性とは身体の内部の異常が原因になっていることを意味しています。従来、うつ病は心の病気と呼ばれることが多く、原因も外的ストレスが大きいのではないかと考えられていました。
しかし、昨今はうつ病の患者は脳内の血流や代謝が低下していることがわかり、心の病気というよりも脳の病気である可能性が高いと考えられています。
気分変調性障害はうつ病とは違い、身近な人が突然亡くなってしまうなど、突発的に起こる喪失感や職場や家庭での長期的なストレスなど、心因性によるものが原因である場合が多いと言われています。
④ 治療方法は心理療法や環境改善
気分変調性障害とうつ病は原因が違うことがあるので、治療方針に関しても異なる方法を行う場合があります。
まず、うつ病は脳の働きが弱くなっていることが原因のひとつと考えられているため、脳の働きを良くするための治療方法が行われます。具体的にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などを服用する抗うつ薬療法や磁気刺激を与え、脳内の活動を良くする磁気刺激治療などがあります。
対して気分変調性障害は心因性によるものが原因である可能性が高いため、カウンセリングなどの’’心理療法’’や職場や家庭などの’’環境改善’’などが挙げられます。ほかには対人関係療法などもあります。
気分変調性障害でも抗うつ薬療法は行われる場合がありますが、人によっては効果が弱いことがあります。効果が弱いからといって抗うつ薬を大量に服用するのは良くないので、抗うつ薬の効果を強くする薬を使用する増強療法が行われることもあります。
気分変調性障害に気づくための診断基準
気分変調性障害はうつ病よりも症状が軽いため、非常に気づきにくい精神疾患です。
しかし、気分変調性障害を治療せずにいると、そのまま悪化してうつ病になることもあります。そもそも長期間、抑うつ状態が続くのというのは本人に決して良い結果を生まないでしょう。
また、うつ病は周囲の人間が気づいてくれる場合もありますが、気分変調性障害に関しては周囲の人間が気づいてくれるという可能性は限りなく低いです。
自分が気分変調性障害の疑いがあるかどうかは自分自身で体調を管理し、疑いがあれば病院へ行くという選択肢を取らなければいけません。
気分変調性障害のような精神疾患にはいくつかの診断基準があります。ここでは診断基準のなかでも使われることが多い’’ICD-10’’の診断基準をご紹介します。
- 抑うつ状態がほぼ1日中続き、抑うつ状態がない日よりもある日のほうが多いこと。さらにその状態に対して自覚症状があるか自分以外の人から見て、2年間継続していること。
- 以下の項目に対し、最低でも2つ以上は当てはまる症状があること。
・食欲減退もしくは過食・不眠もしくは過眠・気力の低下、または疲労・自尊心の低下・集中力の低下、または決断困難
・絶望感
- この障害の2年間において、1度に2ヶ月を超える期間、1と2の症状がなくなったことはない。
- 最初の2年間、うつ病エピソードが存在したことがない。
- 躁病もしくは軽躁病エピソードが存在したことがない。また、気分循環性障害(気分循環症)の基準を満たしたことがないこと。
- 妄想障害・統合失調症・精神病性障害の経過中に起こるわけではないこと。
- 症状が投薬や乱用薬物など、生理学的作用によるものではないこと。
- 症状が社会的・職業的・その他の重要な領域において機能の障害を起こしている。または症状が臨床的に意味のある苦痛があること。
今回は診断基準をわかりやすいように簡単な説明文に変更していますが、実際はもっと複雑に診断基準が書かれています。
このような診断基準を参考にして自身の体調をセルフチェックするのも大事ですが、少しでも異変や疑いがある場合は悪化する前に病院へ行くことをおすすめします。