うつ病の知識

あなたは大丈夫? 4つの気分障害の症状と治療方法について

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あなたは''気分障害''という名称を聞いたことがありますか? 実は年々、患者数が増加しているうつ病や双極性障害などを総称して気分障害と呼びます。今回はあまり聞きなれない気分障害についてお話したいと思います。

 

気分障害という呼び方はもう古い?

気分障害とは字のごとく、気分や精神に異常がある疾患を指し、代表的な疾患として下記の4つが挙げられます。

  • うつ病
  • 双極性障害(躁うつ病)
  • 気分変調性障害(気分変調症)
  • 気分循環性障害(気分循環症)

昔はそれぞれの疾患の詳細がわかっていなかったため、まとめて気分障害と呼ばれていました。しかし、昨今は医学が進んだことにより、原因や症状、そして治療方法についても細かく判断できるようになったため気分障害という呼び方は徐々に使われなくなっていきました。実際、うつ病や双極性障害という名称がすでに世間では認知されているため、気分障害という名称を一度も聞いたことがない人は多いと思います。

 

4つの気分障害の症状や特徴とは?

では気分障害である4つの疾患の特徴をそれぞれ見ていきましょう。

 

①うつ病

日本では知らない人がほとんどいないぐらい有名な精神疾患のひとつです。特徴としては精神症状と身体症状の2種類があります。精神症状としては「気分が落ち込む、不安、イライラする」などがあり、身体症状は「睡眠障害・倦怠感・食欲不振」などがあります。

時間帯によって症状の状態に変化があり、朝方がもっとも辛いと言われています。

昔は働き盛りの20〜40代の人に多く見られる疾患でしたが、昨今は子どもにもうつ病が見られる傾向があり、うつ病の低年齢化が進んでいます。

 

②双極性障害

気分が憂鬱であったり、睡眠障害や倦怠感などが身体症状として現れるうつ状態に加え、気分が高揚している状態が続く躁状態も出てしまうのが双極性障害です。

昔は双極性障害のことを躁うつ病と呼んでいましたが、今はうつ状態と躁状態の両極端な症状を繰り返すという意味合いから双極性障害と呼んでいます。

双極性障害の躁状態には大きく分けて2種類あります。周囲の人間に多大な迷惑をかけ、ときには警察沙汰にもなるようなひどい躁状態と周囲の人間にはそこまで大きな迷惑をかけることはないものの、明らかに気分が高揚しているように見える軽い躁状態である軽躁状態の2つです。前者のようにうつ病に加え、ひどい躁状態も出ることを’’双極I型障害’’と呼び、軽躁状態の場合は’’双極II型障害’’と呼びます。

 

③気分変調性障害(気分変調症)

気分変調性障害はうつ病と症状が似ており、抑うつ状態が数年単位で継続します。うつ病に比べてうつ状態の症状は比較的軽いのですが、長期間症状が継続するため、決してうつ病よりも軽い症状とは言いきれません。

現代医学が進み、うつ病は心の病気というよりも脳の病気だと考えられていることが多く、うつ病患者の脳内の血流や代謝は低下していると言われています。

しかし、気分変調性障害はうつ病の原因が脳内にある確率が高いのに比べ、心に大きなショックを受けるような体験など心因性によるものが原因であることが多いようです。そのためうつ病とは治療方針が異なる場合があります。

 

④気分循環性障害(気分循環症)

気分循環性障害とは軽度の抑うつと気分が高揚した軽躁状態を繰り返すことで、双極性障害に比べると症状は軽いです。

しかし、症状が軽いからといって軽視することはできません。気分循環性障害が悪化して双極性障害になる人もいますし、仕事や家庭生活を乱す原因になることもあります。

 

気分障害の治療方法はそれぞれ違う

  1.  うつ病の場合

うつ病の治療方法としてよく挙げられるのが抗うつ剤を服用する抗うつ薬療法です。うつ病は脳内にある神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)の働きが悪くなっているのが原因と言われており、抗うつ薬を服用することで神経伝達物質の働きを良くすることがうつ病を回復させることに繋がると考えられています。

しかし、このような原因は必ずしもすべての人に当てはまるわけではありません。実際、抗うつ薬療法によってうつ病が良くなる人もいれば、数年経過しても良くならない人もいます。

また抗うつ薬として使用されるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などは種類によって副作用がきついものがあり、抗うつ薬療法ではうつ状態と副作用の2つの苦しみと戦わなければいけません。

人によっては環境を変えることやカウンセリングで体調が良くなる場合もあるので、うつ病には抗うつ薬療法が最善であるとは言い切れないのが現状です。

ほかにも認知行動療法や対人関係療法、副作用の心配が少ない磁気刺激治療などがうつ病の治療方法として挙げられます。

 

  1. 双極性障害の場合

双極性障害の場合、うつ状態と躁状態、どちらの状態で病院へ行くのかで対応が変わります。もしもうつ状態で病院へ行った場合は患者がうつ病なのか双極性障害なのかを見極めるのが非常に大切なポイントです。なぜなら双極性障害の患者にうつ病で使われる抗うつ薬を服用させると躁状態になってしまう(躁転する)ことがあるからです。そのため受診するときは過去に躁状態があった場合、必ず担当医に伝えておかなければいけません。

次に躁状態で病院へ行った場合は躁状態なのか軽躁状態なのかによって詳細が異なります。軽躁状態の場合は受診後、気分安定薬と呼ばれる薬が用いられることが多いです。

気分安定薬は数種類あり、日本ではバルプロ酸ナトリウム(VPA)・カルバマゼピン(CBZ)・炭酸リチウム(Li)などが使用されています。気分安定薬を服用することで感情の高まりや行動、興奮状態など落ち着かせ、感情の起伏を抑えていきます。

上記で挙げた気分安定薬のなかでも炭酸リチウムは使用されることが多い薬なのですが、副作用が強い薬でもあります。さらに気分安定薬はただ単に服用すればいいというわけではなく、血中濃度を測り、有効な血中濃度で薬を服用しなければいけません。

また軽躁状態ではなく、躁状態の場合は気分安定薬の服用だけでなく入院が必要になる場合が多いです。そもそも躁状態というのは入院が必要になるほどひどい状態のことを指しており、場合によっては家族や友人だけで病院へ連れて行くのが難しく、警察と一緒に連れて行かれることもあるほどです。

治療方針としては安静にさせることが大切であり、ひどいときは身体を拘束することもあります。

 

  1. 気分変調性障害(気分変調症)の場合

うつ病と症状が似ている気分変調性障害ですが、すべての場合において抗うつ薬療法が行われるわけではありません。先にも述べたように気分変調性障害は精神的なストレスやショッキングな出来事など、心因性によるものが原因であることが多いため、治療方法に関してもカウンセリングや生活環境を改善することが推奨されています。

 

  1. 気分循環性障害(気分循環症)

気分循環性障害は双極性障害よりも軽い症状ですが、何もせずにいると悪化して双極性障害になってしまう可能性があるため症状が軽いからといって治療をしなくても良いわけではありません。

治療方法としては双極性障害と同じように気分安定薬を服用することが挙げられます。当然、気分循環性障害の場合も血中濃度を測らなければいけません。

ほかには心理療法や家族とともに治療を進めていく家族療法などがあります。

 

気分障害が重度になる前に相談をしよう

気分障害は誰がいつなってもおかしくない症状であり、早い段階で治療を開始したほうが良いです。とくに気分変調性障害や気分循環性障害は治療することを無視していると悪化してうつ病・双極性障害になってしまうため、早期発見・早期治療が望ましいでしょう。

しかし、風邪やケガのように明らかに異変がわかる病気に比べ、気分障害は初期段階において本人も周囲の人間も気づくことができない場合があります。

少しでも異変を感じた場合、相談できるような場所はあるのでしょうか? 気分障害の相談場所としては下記の2つが挙げられます。

  • 児童相談所
  • 全国精神保険福祉センター

各都道府県によって詳細は異なりますが、全国精神保険福祉センターでは精神科医や臨床心理技術者などの専門医が配属されており、電話での相談も受け付けています。医療機関でいきなり受診をするのは気が引けるという人や自分の身体に異変を感じた場合は積極的に活用したい手段のひとつです。

 

気分障害は自分自身での体調管理が大切

重度のうつ状態や躁状態を除き、気分障害は家族や友人を含め、自分以外の他人が異変に気づくのは難しい症状です。過去にうつ病になった私も私自身の口でうつ病になったと伝えるまで家族や友人、職場の上司や同僚など周囲の人間は私がうつ病だということに気づくことはありませんでした。

結局、最終的に自分を一番守ることができるのは自分自身です。人間ドッグや健康診断と同じように自分の精神状態に関しても定期的にチェックするようにしましょう。

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