病院やクリニックでうつ病と診断された場合、一時的に仕事を休む期間を作らなければいけないことが多いです。しかし、その後は自分の体調と相談しながら、いずれは仕事にも復帰しなければいけません。このようにうつ病の患者が仕事に復帰する場合、注意しなければいけないことはあるのでしょうか?
うつ病が治ったかもしれないという錯覚
うつ病の治療を始めたばかりの人や症状が重い時期というのは、うつ病の治療をすることに精一杯です。この頃は「職場への復帰」や「次の仕事は何をすればいいのだろうか?」というような仕事復帰に対する心配はほとんど思い浮かべることがありません。なぜなら本能的に治療に専念する、もしくは専念せざるを得ない状況が多いからです。
しかし、治療が進み、体調が徐々に回復してくると、
「もう自分は働くことができるんじゃないか?」
「働くことができるほど回復しているのであれば、早く仕事に復帰するべきなのでは?」
「治療もいいが、早く仕事に復帰しないと世の中から置いていかれてしまう……」
このような不安や焦りが出てきます。
例えば風邪をひいたときを思い出してください。仮にも熱が40℃近くあるような場合は誰だって仕事を休まなければいけないと思うでしょう。しかし、熱が徐々に下がり、37〜38℃ぐらいになると、「微熱だけど、もう仕事に出れるんじゃないかな」という感覚になる人が多いと思います。
うつ病も同じで回復してくると、心のなかに少しだけ余裕が生まれ、「自分はもう大丈夫なんじゃないか」と錯覚してしまうことが多いのです。
もちろんこれは個人差が大きく、この回復の途中でも仕事復帰し、そのまま元気に過ごす人もいます。
初めてのうつ病から再発させないことがもっとも重要
初めてうつ病になってしまった人は治療も大事ですが、治療が進んでからうつ病を再発させないことがもっとも重要です。実はうつ病というのは初回、2回目、3回目と再発するにつれ、再発率が非常に高くなります。
- 初めてうつ病になったときの再発率 50〜60%
- 2回目の人が再発する確率 約75%
- 3回目の人が再発する確率 約90%
初めてうつ病になった人ですら再発してしまうのが約2人に1人というのはかなり高い確率です。さらに初回のうつ病のときに再発させることをきちんと防がないと、以降の人生においてずっとうつ病と戦いながらの生活になってしまいます。
初回のうつ病のとき、いかに再発させず、しっかりと完治させるのが非常に重要なのです。
仕事復帰するときに意識して欲しい3つの大切なこと
では、うつ病から徐々に仕事復帰するためには具体的にどのようにすればいいのでしょうか?
<1週間に働く日数を減らしてもらう>
もしもあなたが週休1日、週6日勤務だった場合、まずは1週間に出勤する日数を減らすことができないかどうか、会社に相談しましょう。
うつ病でしばらく会社を休み、いざ仕事復帰!というときに以前と同じペースで働き始めるのは非常に危険です。とくに仕事復帰したての頃は、以前に比べて、ひとつひとつの仕事にすごく労力を使います。元気な頃は10%の力でできていたことが、無意識に2〜3倍以上の力を使っていることがあるのです。
このときに「もう自分は回復したのだから、みんなと同じペースにしなければいけない」という感覚で働き続けると、いつの日かガタがきて、またうつ病を再発してしまう可能性があります。
うつ病から仕事復帰する場合は、「もうほとんど元気だけれど、しっかり自分のペースを守ろう」という心構えが大切です。とにかく慌てず、ゆっくり進みましょう。
また、もしも会社に出勤日数を減らしてもらうことを断られた場合、その会社を辞めることも視野に入れるべきです。
うつ病から仕事復帰する場合は、周囲の人間の協力があったほうが間違いなく良い結果を生みます。会社が協力的でないのであれば、早めに身を引くのもひとつの手段です。無理をしてしまえば、うつ病を再発させてしまうかもしれません。
<睡眠時間を削ってしまうような仕事はしない>
元気なときに比べ、1週間に働くペースを落とすのも重要ですが、1日に長時間働きすぎるのもよくありません。とくに睡眠時間を削らなければいけないほどの仕事量をするのはやめておきましょう。
しっかりとした睡眠は自分の体調のリズムを整え、さらにストレス発散にも効果があると言われています。
うつ病から仕事に復帰した直後は以前のようにうまく働くことができないこともあります。そのような自分の状態に不安やストレスを抱えることもありますし、そもそも仕事をしていく以上、不安やストレスとは付き合っていかなければいけませんよね。
大事なのは体調を整え、ストレスをうまく発散していくことです。睡眠時間の減少は間違いなくあなたの体調リズムを狂わせ、さらにストレスを溜めやすい体にしてしまいます。
うつ病から仕事に復帰した直後は、睡眠時間を削らないように注意しましょう。
<服用している薬を自己判断でやめないこと>
うつ病から徐々に回復し、仕事復帰できるほどまでに回復してくると、人はこのような心情に陥ることがあります。
「もう体調も良いし、薬を飲まなくても大丈夫なんじゃないかな?」
もちろん担当医から薬を飲まなくても大丈夫だと言われているなら問題ありません。しかし、担当医から薬を飲むのはまだやめないでくれ、と言われているにもかかわらず、薬を自己判断でやめてしまうのはダメです。
実はこの自己判断で勝手に薬をやめてしまうというのはよくあるケースなのです。実際に私も「もう薬はいいんじゃないか?」「薬を飲まないほうが体調が良いのではないか……」という薬に対しての疑惑が何度も心のなかに湧きあがりました。
これはどうしてかと言いますと、大きな理由のひとつに薬の副作用があります。うつ病のときに処方されることが多い抗うつ薬と睡眠薬はどちらも副作用があります。そのため薬を飲まなければ、副作用を受けることなく、1日を過ごすことができます。また、体が元気なのにどうして薬をわざわざ飲まなけれいけないのか、という疑惑が常に頭のなかを駆け巡るのです。
しかし、この元気な状態というのはあくまで一時的なものであり、本当は薬をちゃんと服用し続ければ徐々に快方へ向かうはずが、薬を勝手にやめてしまうと、回復の流れにムラができてしまいます。
うつ病は通院が終わったからといって完治ではない
うつ病は重度の場合、入院することもありますが、ほとんどの人が通院と抗うつ薬の服用を繰り返し、自宅療養することが多いです。
体調が回復するにつれ通院が終わると、薬の服用だけになるのですが、通院が終わったからいってうつ病が完治しているわけではありません。担当医に言われた薬の量や服用するペースをしっかり守っていき、通院が終わったあとも長い時間をかけて、うつ病を治していくことになります。
そもそもうつ病はそう簡単に完治するものではありません。実際、私は元々の元気な状態が100%だとすると、通院が終わって1年半〜2年後にやっと80%前後ぐらいまで回復したかな、という感覚になりました。
うつ病はとにかく焦らず、慎重に治していくことが大事です。将来の不安や焦りから早く仕事復帰したいと望む人が多いと思いますが、大事なのは再発させないことというのをよく覚えておいてください。