これからは国際的な人が特をすると信じた私は、大阪にある某英会話学校に通っていました。そこには老若男女さまざまな人が英会話力に磨きをかけようと努力しており、そのうちの一人の女性と仲良くなりました。彼女は東京出身で標準語を喋っていて、私や他の受講者が流暢な大阪弁を口にする度に興味深そうに聞き入っていました。レッスンが終わってからは二人で焼肉店に行ったりして、友だち同然の付き合いを2ヶ月ほど続けていたと思います。
いつしか関東地方出身の彼女を女性として意識するようになり、告白しようと考えました。彼女も私と同じことを感じていたようで、相思相愛の仲として楽しい思い出を作っていくことになります。
デートは大阪で楽しむことが多く、彼女を新世界に案内してあげたり難波の街を二人で散策したりしながら愛を育んでいました。しかし、いつしか大阪弁を矯正してほしいと彼女が言い出したのです。最初は冗談を言っているのだと思いましたが、彼女の目は真剣そのものでした。大阪弁についてトラウマがあるのではないかと考えた私は詳しく事情を聞いてみましたが、彼女の口からは身勝手な意見ばかりが飛び出してきたのです。標準語を話す彼女と私との間には多かれ少なかれ言葉の壁が生じているような気がするので、レディーファーストに則り大阪弁を矯正して二人で同じイントネーションでコミュニケーションを取るべきだと主張されました。悪い夢でも見ているような気分になりましたが、彼女とのデート中に言われたのは間違いのないことであり私は戸惑っていたと思います。彼女の考えを尊重して不本意ながら標準語を喋るようにしようと努力しましたが、長年慣れ親しんで使ってきた言葉を矯正することは想像以上にストレスが溜まりました。こんな思いをするぐらいなら恋を終わらせてしまおうと考えた私は、その場の勢いで彼女に電話して別れることとなりました。
言葉にこだわりが強い女性と付き合った私は、まだまだ落ち込んだ状態から抜け出すことができません。言わば最低の恋愛体験となってしまいましたが、学ぶことも多かったように思います。世の中にはいろいろなタイプの女性がいますが、その一人ひとりの信条を受け入れられるぐらい器が大きい男性でなければ恋愛関係は続かないことを痛感しました。英会話教室で知り会った女性は少々イレギュラーなケースかもしれませんが、異性の珍しい考えを知ることができたので次の恋愛に活かしたいです。