病院・クリニックでうつ病と診断された場合、症状の重さにもよりますが、一定期間、仕事を休まなければいけないことがあります。しかし、まだまだ「うつ病 = 精神的な問題」と捉えている人が多く、うつ病でも仕事を休まなくてもいいのではないか? と考えている人がいます。今回はなぜ、うつ病になったら仕事を休まなければいけないのか、その理由についてお話していきます。
うつ病のときは脳内のエネルギーが空っぽになっている
そもそもうつ病はなぜ起こってしまうのかという原因についてですが、まだはっきりと断定できるような理由は見つかっていません。しかし、現状で可能性が高いのが、脳内の神経伝達物質の働きが弱くなることが発症の原因のひとつと言われています。
脳内の神経伝達物質の働きが弱くなると聞いても、なかなかイメージしづらいと思いますが、これは脳内のエネルギーが枯渇している状態に近いです。
例えばあなたの脳内のエネルギーの器が100ポイント入る状態だとします。日常生活で家事・育児・仕事などをしていくことで、器のなかのエネルギーが消費され、100→50→30と減っていくと仮定しましょう。
通常ならば、この減ってしまったエネルギーを「友達とご飯を食べる」「睡眠を摂る」「ストレス発散する」など行うことで回復させることができるのですが、うつ病のときは違います。
うつ病のときの脳内のエネルギーがどうなっているかいうと、この器そのものが小さくなっている可能性が高いです。通常の元気な状態のときは100ポイント入るはずの器が、30・20ポイントというように、少ないエネルギーしか入らないような状態になっているのです。
つまり、1日の家事・育児・仕事をこなしたあと、通常であれば休んで100ポイント貯めることができるはずなのに、1日しっかり休んでも、器そのものが小さいのでエネルギーを全快に回復させたとしても30・20ポイントのエネルギーしか確保することができません。
このような状態になってしまうと、少し仕事をしただけで、すぐにエネルギーが切れてしまいます。さらにエネルギーが切れた状態で仕事をしていくと、器がどんどん小さくなっていきます。
やがて、ひどい状態になると器が空っぽになり、どんなに休んでもエネルギーを貯めることができない体になってしまうのです。
もしも仕事が原因でうつ病になった場合、病院・クリニックで担当医からとりあえず一定期間、仕事を休んでくださいと言われるのには、この小さくなってしまった器をまずは大きくしなければいけないというのが理由のひとつです。
器を大きくすることができなければ、あなたはいつまでたっても少し働いたらすぐに疲れてしまうような状態のままになってしまいます。
うつ病から回復するためには直接的原因から逃げることが大事
うつ病から回復するためには「なぜ、自分はうつ病になってしまったのか」という直接的な原因を考えることが重要です。
病院・クリニックでうつ病と診断され、担当医から「仕事をしばらく休みましょう」と言われたにもかかわらず仕事を続けていると、心に余裕がなく、何が原因かということを考える暇すらありません。
最初に話したように、うつ病を引き起こす原因は脳内の神経伝達物質の働きが悪くなることだと考えられていますが、その働きを悪くしてしまった原因が必ずあるはずです。
うつ病の原因には様々な理由があるのですが、そのうちのひとつが職場環境だと言われています。
うつ病になってしまったら一時的に仕事を休み、ある程度回復してきたら休んでいる期間に何がいけなかったのかを振り返る必要があるでしょう。なぜなら、うつ病の直接的原因から逃げることは、あなたのうつ病を回復させることにおいて非常に重要だからです。
職場環境が原因といっても、さらに細かく内容を突き詰める必要があります。
「自分と合わない上司がいるのか」
「大きなプロジェクトを任され、それが重荷になったのか」
「仕事の作業内容自体が嫌いなのか」
例えば2番目にあげた大きなプロジェクトが重荷になってうつ病になった場合、自分の許容範囲を越えるような仕事をしなくなれば、大丈夫かもしれません。
しかし、3番目にあげた仕事の作業内容自体が嫌いでうつ病になった場合は、その仕事を辞めるということを視野に入れるべきでしょう。
うつ病になったときに仕事を休むというのは、脳内のエネルギーを回復させるだけでなく、うつ病になってしまった原因を考え、自分を見つめ直す時間でもあるのです。
みんなにサポートされているという罪悪感に苦しめられる
あなたがもしもうつ病になったにもかかわらず、仕事を休むことなく無理して仕事を続けていると、仕事仲間にサポートされる可能性が高いです。
「私は仕事ができる人間だからサポートされるようなことはないよ」
もしかすると仕事に自身がある人はこのように考えているかもしれません。しかし、うつ病になるとあなたの仕事のパフォーマンスは落ちる可能性が高いです。
- うつ病の睡眠障害により、仕事をしているときの集中力が低下する
- 大きなミスから些細なミスまで、元気なときに比べ仕事でのミスが圧倒的に増える
- 薬の副作用により、本調子のときと同じような働きができない
おそらく元気だった頃のあなたを知っている仕事仲間たちは、うつ病になってからのあなたの仕事ぶりを見て心配すると思います。また、あなたがうつ病の治療中だということを知った場合、仕事仲間たちはあなたの仕事をサポートするような動きをとってくれるでしょう。
このとき、あなたが「うつ病の治療中だから仲間にサポートされるのは仕方がないし、むしろありがたいことだ」という気持ちで仕事をすることができればいいのですが、多くの人がこのように思うことが難しいです。
なぜなら、うつ病になりやすい人は、メランコリー親和型(責任感が強い・自分ひとりだけでなんとかしようとする・完璧主義者など)の人が多いと言われています。
メランコリー親和型の人は"責任感が強く、完璧主義者が多いため、自分がうつ病の治療中だということをわかっていても、仲間からサポートされているということに対してストレスを感じることが多い"のです。
ストレスを溜めながらうつ病を治療していくのは非常に難しいでしょう。この仲間からサポートされる自分が情けないという状況でストレスを溜めないためにも、うつ病のときは回復するまで一時的にでも仕事を休むのが望ましいのです。
うつ病で仕事を休むことは何も悪いことではない
精神論が根強く残っている日本では、「うつ病で仕事を長期間休む = 情けないやつだ」と思われがちです。しかし、うつ病で仕事を休むことは何も悪いことではありません。むしろ、正当な治療方法をとっていると言えるでしょう。
うつ病で休むのを情けないと考えるのは、うつ病を精神的な問題と捉えているからです。例えば、サッカー選手が足を骨折したらどうするでしょうか? 当然、試合に出るのは一時的にやめ、治療に専念するでしょう。
うつ病も同じです。仕事に出るのは一時期的にやめ、治療に専念するのが当たり前の行動なのです。
うつ病になってしまったときは担当医とよく相談し、決められた期間に関しては必ず仕事を休むようにしましょう。担当医に黙って無理して仕事をし続けるのは、あなたのうつ病を悪化させる可能性が高いです。
うつ病は決して完治しない病気ではありません。しっかりと治療に専念し、回復してから仕事を再開することが何よりも大事なのです。