現状の日本は海外に比べて子育てしやすい環境が整っているかというと、そういうことはありません。むしろ、海外の人から見て、日本は子育てをするのに難しい国と言われることもあります。そんななかで日本では”産後うつ”と呼ばれる症状が増えつつあります。そこで今回は産後うつの原因と対策について話していきたいと思います。
産後うつとマタニティブルーは違う症状
産後うつとは名前の通り産後に現れるうつ症状のことを指します。具体的には出産後に2週間以上うつの症状が続く場合、産後うつである可能性が高いです。
産後うつとマタニティブルーを同じように捉える人もいますが、マタニティーブルーは産後だけでなく、妊娠中にも起こる症状です。さらに細かく症状を見ていくと産後うつとは異なる症状があるため、産後うつとマタニティブルーは違う症状だといえます。
産後うつは通常のうつ病と同じように治療が必要な症状です。日本では精神論が根強く残っており、「つらいのはみんな同じ」「しっかりしなさい」などという言葉で片付けられることがあります。また、本当は産後うつの可能性があるにもかかわらず、医者からも疲れが溜まっているだけ、と診断されることもあります。
本当に自分は一時的に気分が落ちているだけなのか、もしくは産後うつなのかどうかをチェックし、産後うつの場合は専門医から治療方針と治療をしっかりと受ける必要があります。
産後うつになってしまう4つの原因
日本では産後うつになってしまう人もいれば、ならない人もいます。産後うつになってしまう原因は何なのでしょうか? 主に4つの原因が考えられます。
<ホルモンバランスの乱れ>
女性の身体は妊娠中、エストロゲンとプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンが変化します
。出産後、この2つの女性ホルモンは出産前の状態に戻ろうとするのですが、そのときにホルモンバランスが乱れ、心も身体も不安定な状態になり、産後うつの原因のひとつになる場合があります。
<生活環境の変化による疲れとストレス>
子どもが生まれると子ども中心の生活リズムになるため、自分のことが手につかなくなります。また、一人目の出産だった場合、やることはすべて初めてのことばかり。疲労やイライラすることが多くなり、心身ともに疲れていき、産後うつになってしまう人がいるようです。
さらに二人目以降は過去の育児経験があるから大丈夫かというとそんなことはなく、一人目は大丈夫だったのに二人目の子どものときに産後うつになってしまう人もいます。
とくに一人目の子どもがまだ幼い場合、お母さんは二人の育児に追われるため、自分の生活リズムを保つことが難しく、旦那さんや周囲の助けがないとストレスを発散することもできません。様々なストレスが積み重なり、産後うつの原因になってしまうことがあります。
<睡眠時間の確保が難しい>
夜泣きや授乳など、赤ちゃんのときはまとまった睡眠時間を確保することが難しく、睡眠不足になりがちです。
ストレス発散の方法は人によっていろいろありますが、まとまった睡眠を摂ることはストレス発散には効果が高いと言われています。逆に睡眠時間が短かったり、昼夜逆転してしまうと、ストレスがたまりやすいです。そのため不眠になってしまうのも産後うつの原因のひとつと考えられています。
<孤独感による不安とつらさ>
昨今の日本では共働きの夫婦が多く、出産する前まで働いているというのは当たり前のようにあります。
これまでの生活は会社での人との付き合いや友達との飲み会、旦那さんとのデートなど、外の世界に出ることやいろんな人との接点があります。しかし、子どもが生まれると、基本的に働くことはできませんし、外出する機会も圧倒的に減ります。そのため孤独感を強く感じるようになり、それがストレスになってしまいます。
実践したい産後うつの予防と対策
産後うつは通常のうつ病と同じように「真面目な人や頑張り屋さん・ひとりで全部やろうと思う人・完ぺき主義者」このような人がなりやすい傾向があります。この3つの条件に思い当たる節がある人は、妊娠中のときにしっかりと対策をとっておくのがいいでしょう。
<週末は外に出て友達と会話をしよう>
育児期間中、ずーっと家のなかというのは自分では大丈夫だと思いつつも知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでしまいます。外に出て、誰かと話す機会を持つことは非常に重要です。
お母さんのご両親が近くにいる場合は週末だけ子ども預け、面倒を見てもらうなどの対処をとったほうがいいでしょう。また、旦那さんに協力してもらい、週末だけは子どもの面倒を見てもらう約束をするなど、スケジュールの対策をとることで自分の時間を確保しましょう。
<睡眠時間を確保すること>
先にも話したように睡眠をしっかり摂ることは体調改善・ストレス発散にとても効果があるので睡眠時間をしっかり確保することが大切になります。
しかし、睡眠時間を確保しようと思っても、ほとんどのお母さんが「育児をしながら睡眠時間を確保するのは無理だ」と感じていることでしょう。確かに毎晩、しっかりとした睡眠時間を確保することは難しいと思いますが、寝るときは寝るということを心がけるだけでも違います。
例えば、よくやってしまいがちなのが子どもが寝ているうちに家事を済ませてしまおうというやり方です。子ども起きているときだと家事が進まないというのはわかりますが、子どもが寝ているときじゃないと身体を休めることができないのも事実です。もしもあなたが子どもが寝ているときに自分も眠気がある場合は、一緒に寝てしまいましょう。
また、寝ようと思っても寝れない人は、寝ている子どもの隣で目を閉じて横になってください。眠れないのに横になっても効果がないと思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。眠らなくても目を閉じて横になることで体力を回復させ、リラックスすることができるので、眠気がなくても横になる癖をつけておきましょう。
一度、子どもが寝るタイミングで休憩することを逃すと、次はどのタイミングで寝てくれるかわかりません。休憩できるときにしっかり休憩することが重要になります。
<なんでも完ぺきにやろうと思わないこと>
「子どもをちゃんと育てるためには少しの失敗も許されない」
子どもはちょっと目を離したうちにケガをしたり、食事に関しても栄養面や食べさせてはいけない食べ物のチェックなど、育児というのは生命に関わることも含まれるため、どうしても神経質になったり、間違えがないように完ぺきにしようとしてしまいがちです。
しかし、これまでの人生で失敗をしたことがない人がいるでしょうか? 子育ても同じです。誰だって失敗はするし、なかなかうまくいかないこともたくさんあります。もしも子育てで何か失敗をしたとしても自分を責めすぎず、何もかも完ぺきにやろうとは思わないようにしましょう。
また、育児本はお母さんにとって力強い味方ではありますが、あまりにも育児本の通りにやろうと思うと、心身ともに疲れてしまいます。子どもの特徴や性格はそれぞれの家庭で違います。本に頼りすぎず、ときにはママ友やお医者さんに相談をして育児をしていきましょう。
子どもとお母さんの身体、両方を大切にすること
昔の日本は2世帯住宅の家が多く、育児に関してもお母さんだけでなく、祖父母・兄弟など、いろんな人が面倒を見てくれる環境が整っていました。しかし、最近は夫婦共働きのなかで子どもを育てていかなければいけないという非常に大変な状況です。そんななかで自分を追い込むような考え方をしていては身が持ちません。親としての責任感は大事ですが、自分自身が元気でいることも大切です。あまり難しく考えすぎず、子育てに取り組んでいきましょう。