私自身もそうでしたが、うつ病患者さんの大きな悩みの一つに、うつ病で有る事をオープンにするか、クローズにするかという事が有ると思います。
勿論、病状の程度や置かれている立場など、患者さんそれぞれの状況の違いというのは、決断を下す上で大きな壁かも知れません。その仕事からどうしても途中リタイヤ出来ない、不幸な事に、家族が体裁を気にするあまり、患者本人にクローズにするように促すという最悪な場合も有るのです。
私の鬱は平静を装う苦しみの毎日
実は私自身、田舎の狭い町での自営業という事で、近所の目や、お客様の目を気にして、直接言葉にして言われた訳では有りませんでしたが、クローズにせざるを得ない空気に飲み込まれていました。私自身も、悟られまいと平静を装うという苦しみの毎日でした。
うつ病などの精神疾患は、今でこそ社会の理解も進み、決して珍しい病気では無いので、オープンにされる方も多くいらっしゃいますが、やはり、恥ずかしいとか、変なプライドとか、就業中の方であれば、仕事態度から、サボってるとか怠けてるという目で見られてしまうからという理由でクローズにされてるという悲しいケースも有るのです。
私のように、自営業に従事してる者でさえも、家族から、怠けや仮病扱いをされる程でしたから、一般の会社勤務の方の苦悩は計り知れないと胸が痛みます。もっとも、私の家族のような酷いケースは稀だと信じて下さい。なぜかというと、私は婿養子という立場の人間なのです。
ですから、仕方がないと言えば仕方がないのかも知れませんが、少なくとも家族の一員となったのですから、家族として見守って欲しい気持ちでした。特に性格上、義母は絵に描いたような偏見の持ち主で、私のような病気の者を腫れ物に触るような扱いをする人です。いくら血の繋がりが無いとはいえ、私に対してもそのような態度は見え見えで、関係はどんどん遠ざかって行きました。対して義父は、人一倍物静かな人で、心の内が全く読めない人です。
私の鬱を理解してくれない人たち
不運は重なるもので、実は義父も婿養子なのです。立場上、私の心情を少しは理解できるはずなのに、誰にも何にも語ってくれない人なのです。妻は当初は勿論、心配してくれましたが、病歴が長くなるにつれて、痺れを切らし、怠けや仮病扱いをしてくる始末です。
確かに、妻を含めて家族には辛い思いをさせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいですが、本当に一番苦しいのは私だという事を理解してくれません。妻と義母とは、正真正銘、血の繋がった母娘ですから、妻と義母との二人から同じような目で見られていたのです。
苦しい気持ちを伝えようとすると、「悲劇のヒロインか」、「被害妄想じゃない」と、信じ難い言葉が返ってくるのです。私はどんどんと自己嫌悪に陥り、悪化の道を辿りそうに成ってしまうのです。これでは本当にダメだと、本やネットで情報を集めると、やはり誰か理解を持ってくれる人に心の内を打ち明けないといけないという事を知り、私は学生時代からの一番の親友に思い切って全てを打ち明ける事にしました。
彼は、真剣に私の話を何も言わずに、ただただ聞き役に徹してくれたのです。最後に一言、「また辛くなったら、俺に何でも言えよ」と。私の心は一気に晴れると同時に、今まで堪えていた辛さがこみ上げて、涙が止まりませんでした。私がうつ病だからと言って、親友は私と距離を置くどころか、より心強い味方と成ってくれたのです。
変なプライドを持ったり、恥ずかしい気持ちを心の内に閉じ込めていたら絶対にダメなんだと思いました。そんな中、私は家業を辞する事としました。このままでは病気は回復するどころか、必ず悪化してしまうと確信したからです。
どことなく家族が、ホッとした様子に見えて、悲しい気持ちで胸が張り裂けそうでしたが、どこか吹っ切れたような気持にも成れました。46歳という年齢での再就職となるわけで、ハローワークに通う日々となった訳ですが、私は、うつ病である事をオープンにしています。
うつ病をオープンにしたことで
まだまだ少ないとはいえ、障害者雇用に積極的な企業も増えているのです。クローズにして探した方が、当然の事ながら間口は広くなるのですが、無理をして一般職でフルタイム勤務出来る自信が私には有りませんし、ハローワークの方や医師のアドバイスも有っての決断です。
これは本当に苦渋の決断ですが、自分で決めなくては絶対に後悔すると思います。どちらにも、メリット、デメリットは有りますが。オープンにすれば、デメリットの方が大きいとは思います。収入面では確実にデメリットと成りますし、周囲からの目も気にしなくてはいけないかも知れません。
しかし、最大のメリットは、心が晴れて、回復への道が開けるという点にあると思います。仕事についても、焦らずに始めて徐々にこなせる範囲を広げていけば良いと思います。クローズにすれば、当然、企業の受け口も大きく、収入の面でもメリットを見込めるでしょう。
ハローワークの方や医師のアドバイスでは、必ずと言って良いほど、挫折して病状が悪化するケースが多いとの事です。
勿論、完全に一般論として語れるものでは有りません。クローズにされていても、成功してる方もたくさんといらっしゃるのでしょうから。それだけ私は弱虫で、卑怯な考えの持ち主なのかも知れません。
でも私は、オープンの道を選んだのです。周りのアドバイスも有りましたが、最終的に決断したのは自分自身です。後悔だけはしたくありませんから。
皆さんも、判断を下されるのは他ならぬ、あなたご自身だと思います。