重度のうつ病の場合は話が別ですが、軽度のうつ病の場合、うつ病の治療をしながら仕事をしている人がいます。では、うつ病の症状が仕事中に出て、困るようなことは何かあるのでしょうか? 今回はうつ病の症状が仕事中に出てしまうとどうなるのか、そして対策方法について考えていきます。
うつ病の症状はあなたの仕事のパフォーマンスを下げる
<眠くて仕事に集中できない>
うつ病の身体症状には睡眠障害があります。この睡眠障害は個人によって違いがあり、具体的には下記の4種類の傾向が見られることが多いです。
- 眠りが浅い
- 寝つきが悪い
- 寝ている途中で何度も目が覚めてしまう(とくに深夜)
- もっと寝ていたいのに朝早くに起きてしまう
うつ病のときは満足のいく睡眠をとることができないため、仕事中でも頭がすっきりしておらず、集中力が持続できないことがあります。
また、会社に勤務している人はほとんどの場合において、朝出勤することが多いでしょう。しかし、うつ病のときは上記のような睡眠障害があるため、朝、起きれずに遅刻してしまうなんていうことが当たり前のように起こります。
さらにうつ病のときの睡眠障害に関しては、基本的に寝れない(不眠)ケースが多いのですが、逆に寝すぎてしまう(過眠)人もいます。
うつ病のときの過眠というのは、例えば「16時間寝て、あとは起きている」というように長時間、寝たからといって起きている時間は眠たくないかというと、そんなことはありません。どんなに寝ても寝足りず、寝ようと思えばいつでも寝れるような状態が続きます。
実際、私は過眠の症状がひどく、ベッドのなかで眠っては起きて、ちょっと水分を摂って、ご飯を食べて、また眠って起きてを繰り返していました。もう起きているのか寝ているのか、自分ではよくわからないぐらいの状態です。
もしも当時、この状態で仕事をしてくださいと言われても、できなかったでしょう。うつ病のときの睡眠障害というのは、それほどまでにひどいときもあります。
<好きなことですらやる気がなくなる>
うつ病の精神症状としてよく挙げられる”意欲・やる気の低下”ですが、この症状に関しては誤解している人がいます。
意欲・やる気の低下と聞くと、嫌いなことを含め、日常生活(掃除・洗濯・炊事)のすべてにおいてやる気がでなくなると考えている人です。お風呂やシャワーを浴びることですら億劫に感じるなど。
もしもあなたが「今の仕事は好きな仕事だから、うつ病になっても大丈夫だと思う」と考えているならそれは大間違いです。うつ病の精神症状である意欲・やる気の低下は自分が今まで好きだと感じていたことですら、やる気が出なくなってしまいます。
例えば、旅行が好きだった人は当然、旅行に行く気すら起きませんし、スポーツやテレビゲームが好きだった人も、それらをやろうという気が起きません。当然、好きな仕事も本当は好きなはずなのに、なぜかやる気が出なくなってしまいます。
また、仕事に大きく影響するのが義務があることもできなくなってしまうということです。例えば、今日中にやらなければいけない仕事があったとします。頭のなかではそのことを理解しているにも関わらず、結局できないまま1日が終わってしまうのです。
他にも絶対に出席しなければいけない重要な会議があるにも関わらず、出席できないなど、”目的があるにも関わらず行動ができない”状態になってしまうのです。これらは言わずもがな仕事に大きな影響を及ぼします。
<物覚えが悪くなり、うっかりミスが増える>
うつ病になると仕事中のちょっとしたミスが驚くぐらい増えます。このミスというのは、
「今日中に取引先に請求書を送らなければいけなかったのに送るのを忘れてしまった」
「重要な書類を間違ってシュレッダーにかけてしまった」
「発注ミスでいつもより多い数の注文をしてしまった」
このような仕事に大きく影響が出るようなミスを含め、本当に些細なことができなくなってしまいます。
お茶をよくこぼしたり、昼ごはんを買いに行こうとしたとき上司からタバコを頼まれたのに買ってくるのを忘れたり、会社を出るのが最後のひとりなのに電気を消し忘れたりなど、本当に些細なミスです。
実は大きなミスよりもこのような小さなミスのほうが精神的ダメージが大きく、「自分はどうしちゃったんだろう……」とものすごく不安になってしまいます。
すでにうつ病の治療を開始している人であれば、うつ病のせいかもしれないと気づくことができますが、治療をしていない人は何が原因かわからないうちにうつ病が悪化し、仕事がままならないような状態になってしまいます。
一番効果的な対策は”とにかく休むこと”
では、先に話したようなうつ病の症状が仕事中に出た場合、どのようにして対処していけばいいのでしょうか? これに関してもっとも良い解決方法は仕事を休むことです。
「仕事を休めと言われても休めないから困っているんだ」
「休めるのではあれば苦労はしないよ」
「どうしても生活費がいるんです……」
各々、事情はあると思いますが、やはり仕事を一時的でもいいので仕事を休むのが一番です。
最初に話した仕事中に影響を及ぼすうつ病の症状を見ていただければわかるように、うつ病になると元気なときに比べ、間違いなくあなたの仕事のパフォーマンスは落ちます。
また、あなたの同僚や上司もあなたのことを心配し、気づかうことになるでしょう。酷な話ですが、なかにはあなたのことを戦力外と見なす人もいると思います。
うつ病に限らず、すべての病気に言えることですが、病気はしっかりと治してから働くのが一番です。「うつ病と戦いながら仕事をするにはどうすればいいのか?」ではなく「うつ病を治すために一時的に仕事を休むにはどうすればいいのか?」ということを第一優先に考えるべきでしょう。
うつ病でなくても調子が良いとき悪いときは必ずある
うつ病になってしまったときは回復するまで仕事を休んだほうが良いといいましたが、どうしても仕事を休むことができない人も世の中にはいると思います。そこで、うつ病を治療しながら仕事をしていくために少しでも対策できることをまとめました。
<人には調子が良いときと悪いときがあることを再認識する>
うつ病の治療中は何かと視野が狭くなりがちです。
「自分はもうダメかもしれない」
「死んで早く楽になりたい」
「このままじゃいつ会社をクビにされるかわからない」
このように物事のすべてをマイナス思考で捉え、将来に対しての不安や焦燥感がどんどん高まっていきます。
しかし、このように将来に対して不安や焦燥感を抱くのは、うつ病のときに限ったことでしょうか? 生まれてから死ぬまで一度も不安や辛さ、悲しいことを経験せずにいることができる人がいるでしょうか?
うつ病のときに限らず、人はどこかのタイミングで不安や焦燥感を抱きます。良いときもあれば悪いときもあるのです。
うつ病のときはマイナス思考でさらに不安や焦燥感を強く抱いてしまいがちですが、人にはそういうときもあるだろう、と考え方を変えることが大切です。
<うつ病だからダメなんだと割り切ってしまう>
仕事中のミスが増え、不安や焦燥感が高まってくると、人は「どうして自分はこんなにダメなんだろう……」と考えてしまいます。つまり、自分の精神的な問題でミスを引き起こしていると考えてしまうわけです。
しかし、健常なときであれば自分のやる気のなさを疑うべきかもしれませんが、うつ病のときは違います。ミスが多いのは精神的な問題ではなく、うつ病になっているからです。
私はうつ病と診断される前まで、仕事のミスや遅刻、原因不明の体調不良に対して、「なんて自分は情けないやつなんだ」と自分のせいにしていました。しかし、精神科へ行き、うつ病と診断されたときに随分と心が楽になったことを覚えています。
今でも勘違いしている人が多いのですが、現状うつ病は心の病気ではなく、脳の病気である可能性が非常に高いと言われています。つまり、自分の気の持ちようでなんとかなるかというと、そんなことはないのです。
仕事中のミスを自分の精神的な問題にしてしまうと、どんどんストレスが溜まり、うつ病の症状はさらに悪化してしまいます。「うつ病だから仕方がない」ぐらいの軽い気持ちで考えるのがいいでしょう。
また仕事仲間からサポートされることに関しても、サポートを思う存分、受けましょう。もしもあなたの友達が何か辛い状況だったら、あなたはどうしますか? その友達の手助けになるような行動をとるのではないでしょうか?
「みんなに迷惑をかけて申し訳ない」という気持ちがついつい先行してしまいがちですが、「今は申し訳ないけど助けてくれ」という気持ちで望んだほうがいいでしょう。
一番大事なのは、あなたがうつ病を一刻でも早く、治すことなのです。